不可解な恋愛 【完】
「いらねぇよ、こんな金…」
最期の最後まで、彼女に借金の心配をさせていたことに、ひどく罪悪感を覚えた。
金森と会えたことをきちんと伝えていればよかった。もう、あとの祭りだ。
もし願いがかなうとしたら、もう一度だけ、杏奈を抱きしめたい。
もう、感触を忘れてしまっているんだ。だから、もう一度だけでいい。
だけどもうそれが無理であることを、目の前の小さな箱が物語っている。
俺はその箱を抱えて、「お世話になりました」と医者に告げ、病室を出た。
ずっと一緒に居たい。
杏奈がこんな姿になってしまった今、皮肉にも、その願いが現実となろうとしていることに笑った。
俺は骨じゃなくて、生身の杏奈がいいんだよ、ばか。
お前は肝心なところがいつもズレてんだよ。なに勝手に骨とかなってんの。笑わすな。