不可解な恋愛 【完】
助手席に、箱と封筒と杏奈の携帯電話を置く。遺品はこれだけだという。
もう、はしゃぎながらシートベルトを締める彼女の姿を見ることは一生できない。
何も言わなくなった杏奈が、大人しく助手席に鎮座していた。
その時、胸ポケットで携帯が震えた。
相手は金森だった。俺に連絡してくるなんて珍しい。なにかトラブルでもあったのだろうか。
「なんだよ」
「あの、渡したいものが、あって」
「渡したいもの?」
「はい、もしよければ都合がつく日に、飛鳥ちゃんと…大分に来ていただけませんか?」
「……、いや、今すぐ行くよ」
杏奈と、ねぇ。
ちょうどいい。今杏奈を受け取ったばかりじゃないか。
俺は金森の家へ車を走らせた。