不可解な恋愛 【完】

金森は、マンションの前で俺を待っていた。

単独でやってきた俺に、「飛鳥ちゃんは、都合がつかなかったですか?」と、おずおず尋ねる。

質問に答えずに用件を問うと、彼は俺に茶色い紙袋を突き出して、突然地面に平伏した。






「やっと、やっと…300万、集まりました…!まずこれを飛鳥ちゃんに返したくて、」


「……」


「本当に、彼女には迷惑をかけました…、申し訳なかった…、これを、彼女に渡してください、」






地面から頭を離さずに、彼は紙袋を持った手を俺に向かって伸ばし続ける。

受け取ると、中には本当にきっちり300万円の金が入っていた。






「今さら遅ぇんだよ…っ、」






初めて、涙が出た。

何が悲しいのか、もはやわからないけれど。

心の中でぐちゃぐちゃと混ざっていたものが、一気に溢れ出す。



杏奈を返してほしい。

杏奈に逢いたい。

杏奈が、まだ、こんなに好きなのに。



涙を流す俺に、金森が戸惑いの表情を浮かべていた。
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