不可解な恋愛 【完】
黄金色に輝く天井や壁。
この前と違うのは、俺がただの客じゃないってこと。
『神崎さーん!』
入店した俺を見つけて、遠くの席からぶんぶん手を降ったのは
言うまでもない。飛鳥に扮した杏奈だった。
他の客の接客中なのに礼儀をわきまえない態度をとったからか
一緒にいた先輩らしきホステスに、秒速で叱られてやがる。
相変わらず笑える女だ。
また、当たり前のようにVIPルームに通された俺達に
今日も美羽と飛鳥がついた。
飛鳥はさっきのへまでちょっとへこんでいる様子。
そんな彼女に、笑いがこみ上げる。
「馬鹿だよね、お前」
『だって嬉しかったんだもん』
「恥ずかしいんだよ。こっちの身にもなれ」
『ごめんなさい、』
彼女の白い手が、ライターを弄ぶ。
ちらりと上司に目をやると、彼はこの間と変わらず美羽にべったりだ。
でもこの前と違うのは、どうでもいい会話の中に本題を上手く盛り込んで
情報を得ようとしているところ。やっぱプロだな。