不可解な恋愛 【完】
「お前さぁ、ブランドもののバッグとか持ってないの?」
金持ってんの?とは聞けないから、この質問。
この前も、言っちゃあ悪いけど、みすぼらしい格好してたしな。
『うん。あんまり。お金ないし』
「うそつけ。だいぶもらってんだろ」
『もらってないよ。付くのもヘルプばっかだし』
「ふーん」
『それに最近、全員お給料下がっちゃって。困ってるのよ、みんな』
従業員の給料まで切り詰めて経営してんのか。そうとうキてんな。
お前ら売られんだぞ、のん気な顔してるけど。
と、言ってやりたいところだが口をつぐむ。
そんなこと知りもせず酒をつくる飛鳥の横顔は、とても華奢で
今にも零れ落ちそうな睫毛が、照明にてらされて大きく顔に影を作る。
どういう経緯でホステスをしているのかは知らないけれど
まぁわけありなのに変わりはないだろう。
一体誰が、こいつを守ってやるんだろうか、この先。