不可解な恋愛 【完】
「どうだ、何かわかったか?」
「相当キてますね、あの店。もう経営もぐらっぐら」
「やっぱりそうだろうな。期日までに金を返せる見込みはなさそうだろ」
「ないでしょうね。売られますよ、美羽ちゃん。いいんですか?」
「そうなったら俺が買うよ」
「冗談やめてくださいよ」
煙草を銜えたまま、夜の街を歩く。
すれ違う人間は俺達を見て、きっとやばい奴らだろうと眉を顰めている。
そういえば杏奈は、俺の職業が何なんだか気付かないんだろうか。
思えば俺達は、お互いのことを何も知らない。