不可解な恋愛 【完】
Episode 4
俺は、足繁く店に通うようになった。
経営者の借金額も、こいつの素性も、調べなければいけないことはだいたい調べがついた。
そのころには、俺は飛鳥の固定の顧客になった。
『うち、永久指名制なの』
「ああ、そうらしいね」
『だから私は永久に神崎さんの専属なんだよ』
「永久ねぇ…」
『私まだ新人だから、神崎さんが初めてなのよ、指名もらうの』
「へえ、そう」
『神崎さんが初めてでよかった!』
営業トークなのか、本心なのか、やっぱり判断しがたいが
猫のようにごろごろ甘えてくる飛鳥を適当に相手するのにも、最近慣れた。
俺の、横に伸ばした腕の中に入り込んで、俺に擦り寄る飛鳥を横目に煙草を燻らせる。
そろそろ、経営者との接触を取らなければ。
彼が蜷川組に返済する金を、俺たちの組が肩代わりして
その金を一生かかってでもいいから、石田組に返済させることにした。
そうすれば、この店のホステスは安泰だ。
俺は、ここの金の問題を解決するだけ。
蜷川組と石田組の縄張り抗争は、トップの人間が片付けるだろう。
でも、金取りが一番面倒くせぇんだよ。体に被害がなくとも、時間がかかるから。
ここの経営者だけじゃない。俺には、一生借金を取り立てに行き続けなければならない相手がごまんと居る。
しかし、ここの経営者に俺たちの素性がばれたら、もうこの店には来られない。
そしたらもう、飛鳥ともお別れ。永久指名なんて、儚いもんだ。
いつかのブリュレの表面ぐらいにな。