不可解な恋愛 【完】
「お前さぁ…前に外で会ったとき、俺のこと好きとか言ってたけど…あれ本気?」
『うん、もちろん。私、私服で営業トークしないから』
「あっそ。」
『神崎さんは?』
「言っただろ。俺には女がいんだよ」
とは言え、奏音とはまた会えない日々が続いていた。
俺がこの仕事を引き受けてからというもの、今度は俺が忙しい番だった。
だけどたまにかかってくる電話に、俺は心底癒されていた。――と、思う。
「お前、なんでこの仕事してんの」
『知りたい?』
「うん」
『じゃあ今度、杏奈としてデートしようよ』
「お前ほんっと、めんどくせぇな」
『どうしてそんな言い方するのー』
飛鳥はグラスに氷を入れていたが、小さくなっていた俺の煙草に目を付けて、灰皿を差し出した。
ジリ、と消えた火を見て思う。
正直、最近、自分がわからない。