不可解な恋愛 【完】
「俺らの縄張りで、蜷川組から借金なんてされたら困るんだよ、なんか問題が生じたときにさぁ」
「…はい、」
「だからあんたが蜷川組に返す金を、俺らの組が肩代わりしてやることになった」
「そうなん、です、か」
「だから今度からあんたは、俺らの組に金を返すことになる」
「は、あ…」
「利子もちゃーんとあるからね。耳揃えて返してくれるまでは、一生付き纏うから」
「……、」
俯いたマスターは、顎に無造作に生えている髭を触った。
必死に落ち着こうとしている様子に、ちょっと哀れになる。
薄暗い店内で、空調の音だけが響く。
「もう、店をたたもうと、思っているんです、」
「はぁ?」
「担保にホステスがかけられたとき、正直、ラッキーだと思いました。この子たちが売られさえすれば、借金の返済も店の経営も終えることができる」
煙草に火を付けて、マスターから視線をそらすと
天井にひびが入っているのを発見した。
こんな小さい傷も直せないほど、経営難だなんてね。