不可解な恋愛 【完】
「もう、終わりにしたいんです」
「ふーん…」
銜えた煙草を親指と人差し指ではさんで
それを一気に彼の手の甲に突き立てた。
ぎゃあという悲鳴が広い店内に木霊して、彼の手に小さな丸い跡が残る。
「ふざけんな」
「あつ、あつい…!」
「ここのホステスが、みんなどんな思いで働いてると思ってんだよ」
「…あつい、」
「金がねぇのはてめーの事情だろうが。他人巻き込んでいけしゃあしゃあと生きていけると思うなよ」
ソファーから立ちあがり、手の甲に必死に息を吹きかけるマスターを見下ろす。
後頭部を踏んでやろうかと思ったけど、やめた。