不可解な恋愛 【完】
「とにかく、あんたに返す気があろうがなかろうが、金は俺らが片付ける」
「……、」
「死ぬまで…いや、あんたが死んでも、あんたの家族とかに?俺が一生かけて、金取りに行くから」
「う、」
「闇金に手ぇ出すって、そーゆーことなんすよ。わかった?」
人間を売るとか人間が売られるとか、そんな話の中で
ずっと俺の頭の中には杏奈の顔が浮かんでいた。
彼女のあんなに綺麗な目を、哀しい色に染めるのはあまりにも罪だ。
うな垂れるマスターに契約書を書かせて、サインをさせる。
次に俺が来る時までに、連帯保証人を決めておくようにも言った。
彼はもう言い返す気力もないのか、されるがまま、俺に従った。
蜷川組との金の問題を解決する下準備は、これで完了だ。
踵を返す俺の後ろで、女々しく泣く声が聞こえた。