不可解な恋愛 【完】
杏奈と会わなくなってから1ヵ月弱が経っている。

もう一生会うこともない。会わない。そう覚悟して、片付けたこの仕事。

でもずっと、心の中にひっかかるものがあったのも嘘じゃない。

ふとしたとき、杏奈は今どこで何をしているんだろうかと考えている自分に、多少うんざりしていた。



デートがしたいと言っていた杏奈。

もちろんその約束だって、俺は守らなかった。

なぜ彼女に大金が必要なのか、その理由も知れないまま。

俺は消えた。彼女の前から。



そして店がなくなった今、彼女もまた、俺の前から消えてしまった。






「生きてんのかなぁ…」


「誰が?」


「…ひとりごと」






1度だけ絡ませた指先を思い出す。

白くて、とても華奢な指先。

左手から、彼女の骨ばった指の感触が消えない。



大好きな奏音を抱きしめながら、ずっと、一緒に空虚感も抱いていた。

会えないのはわかっていても、本当はずっと会いたかったんだ。
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