不可解な恋愛 【完】
『神崎さん!なんで!?』
一度だけ見たことのある、見慣れない杏奈の姿がそこにはあった。
細い体に大きめのニットを着て、いつもより薄いメイクでそこに佇む杏奈。
チャイムを押したすぐ後に、なんのためらいもなく玄関を開けた彼女は
俺の姿に心底驚いた表情を浮かべていた。
「とりあえず入れろ」
『え、どうぞどうぞ…』
彼女の家に上がり込む。
そこは、女性の一人暮らしとは思えないほど殺風景だった。
白を基調としたインテリア。そんな部屋には雑誌1冊さえ置かれていない。
彼女は俺を革のソファーに座らせ、俺と向かい合う。
状況が把握できていないのは、当然だ。