不可解な恋愛 【完】
「俺、その借金の取り立てに来たの」
『…どういうこと?』
「それが俺の仕事なんだよ。わかるでしょ、この先言わなくても」
『そう、だったんだ…』
「返せんの?金」
『いくらあるの…?』
「総額5000万に、10日で1万ちょいの利子がつく」
絶望的な金額に、彼女の手が震え始めたのがわかる。
一粒、涙が零れ落ちた。
どうしてやるのが、正解なのだろうか。
俺が肩代わり?それは到底無理だ。みみっちいと罵られても構わない。
杏奈は肩を震わせて、静かに泣いていた。
そんな彼女を眺めながら、ぼんやり思い出す。
俺が好きだと無邪気に笑っていた彼女。こんなことに巻き込まれるなんて、夢にも思わずに。
そんな回想に、胸が締め付けられる。
俺が何とかしてやるよ、と言えたらいいのに。
無責任な言葉はかけたくなかった。
だけどやっぱり、ただただ、彼女を守りたいと思った。