不可解な恋愛 【完】
Episode 2
別の日、久しぶりに昼間っからうろうろしていた。
仕事のない午後。だけど仕事用のスーツ着て。
奏音は相変わらず忙しそうだった。
最近、部下がへまをしたらしい。その尻拭いに走り回って。
俺が手を貸そうかと申し出たけど、それだけは嫌だと突っぱねられた。
そういう芯のあるところが、まぁ、好きと言えば好きだけど。
『神崎さん?』
何をするわけでもなく、本当にただ、ぶらついていただけ。
完全に「ちい散歩」のノリで。
そんな時だったから、後ろから俺を呼ぶ女の声に、心底驚いた。
昼間の世界に、俺を知っている女なんか、いたか?
「っと…、誰だっけ?」
『私です、飛鳥です。』
「あー、キャバ…ちがっ、…あのクラブの」
『ええ。こんなところで会うなんて、奇遇ですね』
飛鳥。そうだ、すっかり忘れてた。
この前のクラブで俺についたホステス。
ブロンドのような明るい髪は変わらないけど
その髪をストレートにして下ろしていて
彼女は、白いセーターにスキニーパンツを履いていた。
がりっがりだな、この女。
俺の好みとは真逆だ。
店で見た「飛鳥」の面影はそこにはなくて
彼女は「ちょっと派手な若い女性」として、そこに立っていた。
夜の世界の人間が、太陽の下でまた会うなんてね。
その奇妙な偶然に、思わず苦笑する。