不可解な恋愛 【完】
夜の道を、風を切るように走る俺のメルセデス。
前の車もまだ新しかったのにそんな高い車買って、と奏音に呆れられたのを思い出す。
だって限定車ほしかったし、と反論すると、男は金の使い方を知らないと散々馬鹿にされた。
その時、女って車の良さとかわかんねぇんだな、と男女の価値観の違いを思い知ったのだが
杏奈は車に興味があるようで、窓枠に張り付いて外を眺めていたかと思えば
車内のインテリアをじっくり観察したりと、とても楽しそうだった。
『上開けて!うえ!』
「今ぁ?」
『お願い!』
「寒いからやだよ」
ぶーと膨れた杏奈は再び目を外に向けて、流れる外灯の群れを見つめる。
どこに行くの?と聞く彼女に、決めてないと答えると、彼女は顔をしかめた。