不可解な恋愛 【完】
本当に、宛てもなく。車はどんどん郊外に向かう。
外灯の数も減ってきて、漆黒が俺達を包む。
このまま、本当に遠くに行ってしまいたい。なんて、柄にもなく思う。
全部捨てて、居なくなれたら楽なのかな、とか。
――…んなわけないよな。何より俺は、逃げるのが一番嫌いだ。
『まさかさぁ、神崎さん』
「なに?」
『私のこと山の中の風俗旅館に捨てに行こうとかしてないよね』
「借金返済のために?」
『そう、』
「どうだろうね」
前を見据えたままそう言った俺が、急に極悪非道な人間に見えたのか
彼女は不安げな表情を貼り付けて、じっとこちらを見つめた。
目だけでちらりと彼女を見ると、彼女は小さく『降ろして』と言った。
「馬鹿じゃねぇの」
『体売るのだけは嫌なの』
「捨てないよ。捨ーてーなーい」
『ほんとにー?』
「ほんと。普通にドライブ楽しめよ」
『……、』
「なら引き返すか?」
『…いや。』
なにこの空気、とか心の中で苦笑しながらハンドルを切る。
しばらく車を走らせて、ある公園についた。