不可解な恋愛 【完】
「ここ、1回だけ来たことあるんだよね」
だだっ広いただの芝生広場。木製のベンチがひとつあるだけ。電灯もない。
誰となぜ来たのかは忘れたが、1度だけ来たことがある場所だった。
漆黒に包まれる、黒いメルセデス。ライトを消すと、もうどこに車があるのか全くわからない。
それ以上に、杏奈がどこに居るのかがわからない。
時刻は午前1時。
車から降りた杏奈の傍に立つと、彼女は手探りで俺を探した。
あっちまで行こうか、と発すると、息の白が空気に混ざって溶けた。
歩き出した俺の服を、遠慮がちに掴んで付いてくる真っ暗やみの中の杏奈。
きっと俺が、纏わりつかれるのが嫌いだと言ったのを気にしているんだろう。
男って多分みんな、女のそういういじらしいところが好きだと思う。
服を握る彼女の手首を掴んで外し、その手に自分の手を絡ませた。
弾かれたようにこちらを見上げた杏奈。手なんか繋いだのは、いつぶりだろうか。
だだっ広いただの芝生広場。木製のベンチがひとつあるだけ。電灯もない。
誰となぜ来たのかは忘れたが、1度だけ来たことがある場所だった。
漆黒に包まれる、黒いメルセデス。ライトを消すと、もうどこに車があるのか全くわからない。
それ以上に、杏奈がどこに居るのかがわからない。
時刻は午前1時。
車から降りた杏奈の傍に立つと、彼女は手探りで俺を探した。
あっちまで行こうか、と発すると、息の白が空気に混ざって溶けた。
歩き出した俺の服を、遠慮がちに掴んで付いてくる真っ暗やみの中の杏奈。
きっと俺が、纏わりつかれるのが嫌いだと言ったのを気にしているんだろう。
男って多分みんな、女のそういういじらしいところが好きだと思う。
服を握る彼女の手首を掴んで外し、その手に自分の手を絡ませた。
弾かれたようにこちらを見上げた杏奈。手なんか繋いだのは、いつぶりだろうか。