不可解な恋愛 【完】
「俺、彼女とは絶対に別れない」
『…うん、』
「だから仮に杏奈が俺の彼女になったとしても、杏奈にばっかりは構ってやれないと思う」
『そっか…』
急降下していく杏奈の声のトーン。
横顔に含まれた憂いの色が濃くなるのがわかる。
そっと、繋いだ指を解いた。
素早く首をこちらに向けた杏奈が、今にも泣きそうな顔をしていて
思わず目をそらしてしまった。遠くの空に、工場だかビルだかの灯りが滲んでいる。
「でも俺、杏奈のこと大好きだよ」
一瞬にして、くしゃっと歪んだ彼女の顔。
借金を負ったと知ったあの日とは、また少し違う泣き顔で、杏奈は肩を震わせた。
泣いてるけどこの女、俺のこの一言で、どこまで俺の気持ちを汲んだんだろうか。
どーせこいつのことだから、言わないと何もわからないんだろうな。