不可解な恋愛 【完】



「ねぇ、龍」


「んー…?」


「その女としたの?」


「してないよ」


「そう。やっぱり別に女がいるんだ」


「あ。」






余裕ぶっていたけど、判断力を失っているようだ。情けない。

かけられた鎌にまんまと引っ掛かった自分。

だけど奏音は何ともないような顔で両手で俺の頬を包むと、俺の眉間にキスをした。






「でもきっと龍のことこんな風にできるのは、私ぐらいだと思うな」


「こんな風ってなに」


「ふにゃふにゃ」


「ばか」






このまま下でいるのも癪に障る。

彼女の腕を引っ張って、そのまま自分の下に組み敷いた。

満足そうに微笑む奏音には、杏奈にはない妖艶さがある。

散らばった髪の毛も、潤った唇も。

首筋に顔をうずめると、シャネルのガーデニアの香りが鼻腔を刺激した。
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