不可解な恋愛 【完】



『今日は嬉しい報告があるの』


「なに」


『仕事が決まったの。キャバクラだけど。結構老舗の』


「おーよかったじゃん」


『うん。お仕事頑張るね。それと、これ』






杏奈はコーヒーと一緒に、俺に膨らんだ茶封筒を手渡した。

これなに?なんて野暮な質問はしない。これが何かなんて、聞かずともわかる。

受け取ると、ずっしりと重み。

今まで受け取った金の中で、金額は少ないものの、一番重みを感じた気がした。






「…大丈夫なの、暮らし」


『うん、心配しないで。職も決まったし』


「無理すんなよ。これだけ返してもらえば許すって、組長も言ってたし」


『そっか。この前さぁ、利子計算したんだけどすごいね。年利だけで10億とか』


「借りた金がでかいからねぇ…」


『全額返したかったけど、無理そうだもん』


「だから、無理しなくていいって。それに、俺があいつ探し出すし。そしたらまずこの金返してもらおうね」






茶封筒をひらひらさせると、杏奈は苦笑に近い微笑みを浮かべた。

いろいろと、心の中に張りつめたものがあるんだろう。

眉間をくしゃくしゃと歪めて、少し泣きそうになった杏奈の頭を撫でてそのまま抱き寄せた。
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