不可解な恋愛 【完】



髪に、静かにキスを落とす。

杏奈は顔を上げて、じっとこちらを見据えた。

頭をぐっと引き寄せて、今度は唇にキスを落とす。

杏奈とのキスはまだ慣れない。体を重ねたことも、本当に、まだない。

奏音とのように、お互いを強く求めてがむしゃらに貪るようなキスはできない。

手探りで、でもお互いがお互いを深く求めているのは確かで

キスから溢れ出す愛に酔っている自分が、いつも少し恥ずかしかった。



濡れた音を後に引かせて、唇を離す。

ふやけた瞳の中がやっぱり綺麗で、思わず、目尻にひとつキスをした。






『神崎さん、』


「なに?」


『…する?』






俺の腕の中で、杏奈はひどく妖艶で。

聞いたことのないような潤んだ声に、ここに来るまでに振り払ってきた熱が、また体中に集まる。

つくづく最低な男だと、心の中で自分を罵った。

でも、もうそれでも構わない。

そのくらい、杏奈が






「…大好き」






こんな自分は、大嫌いだけど。

壊れないようにそっと杏奈を組み敷いて、もう一度キスを落とした。
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