不可解な恋愛 【完】
『ねぇ知ってる?』
「知らない」
『ふふ。大分にね、神崎温泉っていう温泉があるの』
「ふーん…で?」
『行こうよ、一緒に』
「神崎が神崎温泉に行くの?」
『おもしろいじゃない』
確かにかなり滑稽だ。
杏奈は可笑しそうに笑いながら、その笑い声の中に何度か咳を混ぜた。
咳きこむほどおかしいか?
「いいよ、行っても」
『うそ?』
「うん。どうせ国東に用事があるし」
『わーい!お休みもらっちゃおー』
「使えねぇホステスだと思われんぞお前」
『いいの。旅行のほうが大事!』
声を弾ませて、杏奈は手を叩く。
そんな姿が、ひどく愛おしかった。