不可解な恋愛 【完】
『これで、安心』
「安心?」
『連絡先がわかってれば、私に何かあってもすぐ神崎さんに連絡が行くし、その逆も』
「まぁそうだね」
『…こんな機械を通してでもいいから、繋がってたいの。じゃないと不安なの』
今度は急に、彼女の顔に影が落ちた。
俺の携帯をことんとテーブルに置くと、彼女は二つ分の空のマグカップを持って、キッチンへ消える。
ころころ変わる、杏奈の表情と心模様。
正直、ついて行けないときがある。だけどそこに魅せられているのも、事実だ。
キッチンへ入って、カップを洗っていた杏奈を後ろからゆっくりと包んだ。
一瞬肩を強ばらせた杏奈は、なぁに?と柔らかく声を発する。
泡のついたままの手から、柑橘系の洗剤の匂いがした。