不可解な恋愛 【完】
Episode 9
「自然…しか、ない」
『雄大ね、』
1ヶ月後、杏奈を連れてやって来た、大分。
雄大な自然。連なる山々。空は晴れて、空気も澄んでいた。
海の見渡せる高台にある、小さな温泉。そこの宿を、俺が、予約。
もちろん…神崎で。
スーツ姿の俺と、金髪スレンダーな杏奈。
俺たちは、完全に景色から浮いていた。
よろめきながら宿に向かう杏奈の持ってきていたボストンバッグを持ってやる。
何が入っているのか知らないが、杏奈の腕くらいなら折ってしまいそうな程バッグは重かった。
女は大変だ。たかだか2泊3日の旅行のために、何日も前から服選んで、バッグに物詰め込んで。
面倒くさいことが嫌いな俺は、女に生まれてこなくてよかったと、こういうときに心底思う。