不可解な恋愛 【完】



携帯を閉じてまた窓の外に目を戻すと、今度は背中にふわりとした感触。

首だけちょっと振り向くと、杏奈がぴったりと巻きついていた。

俺の腹に回っている手首を掴んで彼女を引き剥がす。

向かい合うと、杏奈はおろしていた髪をいつの間にかアップにしていて、その真っ白なうなじから思わず目を背けた。






『お風呂入ろうかと思ったんだけど…お仕事ー?』


「そー」


『神崎さんってお仕事の電話でも軽薄な喋り方するのね』


「軽薄って。そんなこと初めて言われたよ」


『褒めてるんだよ?』


「は。馬鹿にしてんだろ確実に」






束ねられた髪が眼前で揺れる。

やっぱり何が言いたいかわからない、この女。

じっと顔を見つめる俺に、なにかとても期待した表情を浮かべる杏奈。

そんな彼女の両頬をぎゅっと摘み上げて引っ張った。
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