不可解な恋愛 【完】
『いたーい!』
「お前ほっぺたに肉なさすぎ」
たてたてよこよこまーるかいてちょん。
と、思いっきり杏奈の頬から手を離す。
彼女は、引っ張られた部分が赤くなって、アンパンマンみたいだ。
『いたい!女にこんなことするなんて!』
「ぎゅーしてくれるの?ちゅーしてくれるの?どっち、神崎さん!みたいな顔しててムカついたんだもん」
『神崎さんって冷酷!』
「はぁ?そんなこと今ごろ気づいたの?」
『…でも私、痛いの嫌いじゃないよ』
「このドM女が、」
『やーん。やっぱ喋り方が軽薄ー』
その喋り方がかわいいって言いたいの、と杏奈は付け加えて、赤くなった両頬を手のひらでさすった。
赤くなった白い肌が、じっと見ると、ちょっと可哀想で
その手のひらの上に自分の手のひらを重ねた。
一瞬肩を強張らせて、でもすぐにふんわり微笑んだ杏奈。
ゆっくりと唇を重ねて、ゆっくりと啄んで、ゆっくりと離した。
満足げな表情を浮かべる杏奈を、やっぱり愛しい、と思う。
一緒に居れば居るほどに、杏奈のことを好きになる。
運命とか、永遠とか、そういう陳腐な言葉まで、信じてしまいそうになるんだ。