不可解な恋愛 【完】
『神崎さん、』
「なにー?」
『お風呂にする?それとも杏奈にする?』
「うわ。むかつくそれ。なんか、すっげーむかつく」
『どうしてよー!』
俺の肩をばしっと叩いてきたアンパンマン杏奈に、久しぶりに声を出して笑った。
杏奈はそんな俺を見て、肩をバシバシ殴りながらも、とても嬉しそうだった。
「じゃあしょうがないから、風呂の前に、杏奈にする」
肩を叩く手首を掴んで杏奈を引き寄せる。
窓の外に広がる雄大な自然。知らない土地でふたりだけ。
そんなシチュエーションが、嫌なことを、このときだけ全部忘れさせてくれていた。