不可解な恋愛 【完】
――…遮光カーテンで、光を遮断された部屋。
上気した杏奈の身体は、本当に白くて細い。
だけど、抱き心地が悪いと思っていたのも、今は昔、っていう感じ。
杏奈を抱き締めるときは、なるべく優しく柔らかくを心がけているつもりだけど
事が進むと、どうしても歯止めが利かなくなってしまう。
でも、どんなに乱暴に求めても、どんなにがむしゃらに揺すっても、彼女の身体が壊れてしまうようなことは、当然無くて。
人間って案外丈夫に出来てんだな、と、汗で額に張り付いた杏奈の前髪を分けながら、ぼんやり思った。
腕も脚も指も舌も上手く絡ませてくる奏音のことをいつも、こいつエッジがきいてんなー、とかちょっとふざけて思っている。
それはそれで、好きだ。だって今まではそれが俺の全てだったから。
だけど杏奈との情事は最初から最後までとても甘い。次の日、胃もたれしそうなぐらい。
見せかけの甘さなら、興味もあんまりないような女たちと何度も経験したことがあるけど
こんなに、体の芯を抜かれるような気持ちになるのは初めてだった。
杏奈の髪を何度も撫ぜて、なぜかいつも涙を流すその目の端にキスをする。
頬にも、口元のほくろにも、柔らかい首筋にも、骨っぽい肩にも、鎖骨にも、胸にもキスを落として
神崎さん、好き、
と発された唇を最後に塞ぐ。すぐに離して、俺も言う。
「杏奈…、俺も、好き、」
涙で濡れた瞳で見つめられる、それだけで感情が昂ぶる。
好きと言うのも、全く恥ずかしくないくらいに。