不可解な恋愛 【完】



いつも、杏奈を食べ尽くしたい、という感覚に苛まれる。

余すところなく、最後まで。



だから、何度も往復させる指が熱くふやけても、まだ足りない。

彼女の体中が火照り上がって、何度脚が痙攣しても、まだ足りない。

そんな自分を、狂ってると、ちょっと思う。

そして、焦らされて焦らされて、杏奈はまた涙を流すのだ。






「…、いや?」


『や、じゃない…けど、』


「けど、なに?」


『…もう、きて、』






ほとんどうわ言のように、口をぱくぱくさせながら、杏奈は言った。

汗が滴る俺の髪に、右手を伸ばしてさし入れる。

耳元に、彼女の指先からの熱を感じて、身震い。

杏奈はそのまま俺の頭を自分に引き寄せて、唇を合わせた。



包み込むように、今度は髪を撫でられるほうになった俺。

他の女にこんなことされれば、確実に居心地が悪いだろう。

だけど杏奈の愛撫は、胸が苦しくなるくらいに愛おしくて、そのまま倒れこむように胸に顔を埋めた。
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