不可解な恋愛 【完】



『死んでもいいなあ、』






情事後、乱れた髪を手ぐしで直しながらそう言った杏奈が

なんだか知らない人のように見えて、思わず抱き締めた。

どっかに行ってしまいそうで。






「ヤったぐらいで死ぬな」


『やだー下品ー』






腕の中でくすくす笑う杏奈。

俺は情事後のこの時間が結構好きだ。

奏音はあまりべたつくのが好きではないようで、終わったらすぐ煙草を吸い始める。

そんな部分も、エッジがきいてんなーって感じで悪くないけど。

どちらかと言えば、甘い方が、俺は好き。






『死んでもいいって思うぐらい、1回1回がいい、ってこと』


「お前なんで平気でそういうこと言うの?恥ずかしくないのかよ」


『全然。だってほんとのことだもん』


「あーそう」


『伝えられるときに伝えとかないと、後悔するかもしれないでしょ』






強い瞳で言う言葉には、妙に説得力があった。

そんな彼女に押されて、うん、と頷いただけの俺。
< 86 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop