不可解な恋愛 【完】
『死んでもいいなあ、』
情事後、乱れた髪を手ぐしで直しながらそう言った杏奈が
なんだか知らない人のように見えて、思わず抱き締めた。
どっかに行ってしまいそうで。
「ヤったぐらいで死ぬな」
『やだー下品ー』
腕の中でくすくす笑う杏奈。
俺は情事後のこの時間が結構好きだ。
奏音はあまりべたつくのが好きではないようで、終わったらすぐ煙草を吸い始める。
そんな部分も、エッジがきいてんなーって感じで悪くないけど。
どちらかと言えば、甘い方が、俺は好き。
『死んでもいいって思うぐらい、1回1回がいい、ってこと』
「お前なんで平気でそういうこと言うの?恥ずかしくないのかよ」
『全然。だってほんとのことだもん』
「あーそう」
『伝えられるときに伝えとかないと、後悔するかもしれないでしょ』
強い瞳で言う言葉には、妙に説得力があった。
そんな彼女に押されて、うん、と頷いただけの俺。