不可解な恋愛 【完】
『神崎さん、こういうお店嫌い?』
「好きではない」
『落ち着かない?』
「落ち着かない」
『杏奈って呼んで?』
「急だなお前、毎度毎度…」
煙草を取り出すと、彼女は慣れた手つきでライターを差し出した。
「さすが、」と笑うと、彼女はまたにっこり微笑む。
火をもらっているところに、コーヒーを持った店員がやってきた。
タイミング悪ぃなここの店員は。
彼は、俺たちの関係がますますわからなくなった、とでも言いたそうな顔で
「コーヒーのお客様…」と、小さく発した。
ブラックのまま、コーヒーをすする。
杏奈はそんな俺をにこにこと眺めていた。
何を考えているのか、よくわからない女だ。ただ、にこにこしているだけ。
「お前さぁ、」
『杏奈。』
「…はぁ。めんどくせぇ」
『で、なに言おうとしたの?』
「痩せすぎだろ、ちょっと」
『そう?デブよりいいでしょ?』
「女はちょっと肉付きがいいぐらいがいいんだよ」
そう言いながら、脳内に奏音の姿を映す。
こんながりがりな女、抱き心地悪いだろうな、完全に。
痩せている女が綺麗だとか誰が言い出したんだろう。
男は皆、肉付きの良い女の性的魅力にそそられるに決まってる。