不可解な恋愛 【完】
「やくざきえろー!」
子供ってどうしてこうも無鉄砲なんだろうか。
トレーナーについている名札を見ると、そこには「かなもり」と名前が記してあった。
ああやっぱり、と俺は思う。
このガキを連れさらって、事務所に軟禁にでもすれば、あの男はきっと金を用意する。
だが、その前に警察に連絡されたらおしまいだ。
俺の人生も、杏奈への返金も、あの男の持つ、組織への借金も。全部がパーになってしまう。
それはあまりにもハイリスクすぎて、この口の悪いガキに苦笑するしかない俺。
小さいくつの裏で、俺の捨てた煙草の火を消しているガキに近づくと
彼は少しだけたじろいで、でも強い目で俺を睨んだ。