不可解な恋愛 【完】




「俺は優しいやくざだからいいけど、他のやくざにおんなじことしたら殺されるよ?」


「うっせ!けーさつ呼ぶぞ!」


「…まぁいいや。またな、ガキ」






どうせ今後、嫌になるほどこいつの顔を見る機会があるだろうから

今日のところはさっさと切り上げることにする。

あの親にしてこの子ありだな、全く。



あのガキはきっと今晩、親父とお袋に言うんだろう。

今日家の近くでやくざに会ったよ、と。

奴はどう思うんだろうか。俺のことを思い出すだろうか。

それとも今の幸せに浮かれて、自分の危機に気付かないのだろうか。



どちらにしろ、今後のこいつらの惨状をリアルに想像できる俺は

危ういところに立たされながら、平平凡凡を気取って暮らしているこいつらが可笑しくて

笑いをこらえることができなかった。



せいぜい最後の幸せ噛み締めとけよ。
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