不可解な恋愛 【完】
「安いよ、一律2万5千円!龍になら買えるよね」
「…買わないよ。うさんくせぇ」
「大丈夫、全部本物だし。でもまぁお前が俺に払った2万5千円は犯罪の糧になりますけどね」
「お前次はなに企んでんだよ…悪徳商法か?」
「そんな手間のかかるちんけな犯罪、俺がやると思う?もっとスケールのでかいこと計画してんだよねー」
「…俺、犯罪者になんのイヤ」
「今更何言ってんだよ。買え。」
「は?俺に命令すんな。」
「…てめぇ俺に5万借金があるの忘れてんだろ」
「借金?…覚えてねぇ」
「1年前に貸しただろうが!てめぇの組の年利だったら100万の利子がつくぞこの5万に!」
「みみっちい男だな!5万ぐらい忘れろ!」
「その5万に目ぇつぶってやっからこの指輪どれか買え言ってんだよ、カス!」
「カスー!?てめぇ殺す」
「お前に俺は殺せないね。なぜなら俺の方が頭がいいからです、あっはっは!結局世の中、有能な人間が残るようになってるんですよ、神崎くん」
水島が何を企んでいるのか、この指輪が何に使われるのか、そこら辺は全く見当もつかないが
さんざん言い合いをした結果、確かにこいつに借りがあった俺は、指輪を購入するはめになった。
ケースの中から、ピンクの宝石が埋め込んであるシルバーリングを選んだ。サイズも適当に。
水島は満足げに俺から金を受け取ると、それを別のケースに投げ入れた。
隙間から少しだけ中身が見えたのだが、きっと同じように巻き上げたのであろう金が、ケースにぎっしりと詰め込まれていた。
にっこりと微笑んで、水島は「ありがとー龍」と語尾に音符を付けて言う。
末恐ろしい男だ。