儚キ想イ
 もう駄目だよ。

ナギが隣にいても、どんな姿でももう頑張れない。

「いいざまだわ…」

 そう言い残してなつは…どこかへ言った。

 取り残されたちっぽけな私とナギは何分か止まったまま動けない。

誰も来てくれない寂しい場所にずっといる。


(久しぶりにこんなにナギを近くに感じれた…な…)

「ナ…………ギ………」

「…………………」

 やっと起きられるようになった私。目の前は薄くぼやけていてよくわからない。

「………………」

 でも一つだけわかるのは。

「大好きなナギ…」

 近くにいること。

「何でこんなん……なっちゃったの………?」

「…………」

「答えてよ…」

「………………」

「ナギ………?」

「………………」

 いつまでも反応がないままナギはずっと寝ている。

「ナギ…………ナギ!!!?」

「………………」

 いくら揺すっても起きてくれない。

「ナギ!?私だよ!シノだよ!?」

「………………」

「ねぇ!起きてよ!?」

「………………」

「まだ終わらないで!!?ナギの夢聞いてないよ!?聞かせてくれるんじゃないの!?」

「………………」

「ねぇ!今ここで死んだら私!ナギのこと一生恨むよ!ねぇ!?ふざけないでっ目開いてよ!」

「………………」

「…ねぇ……別れたくない………からさぁ……」

「………………」
「ナギにされたこと許してるから……!」

「………………」

「………だって………」

「………………」

「ナギが好き」

 だから。

 言おうとした瞬間、私にとってナギとの最初で最後のキスが終わった。

ほんの一瞬だけ。

でも一生分で……忘れられない。

「…………バカ…」

「お……れ…も………好き………だっ……………た………」

「聞こえないよ…!」

「………好き………だ………………」

「………バカ……こんなとこで力使わないで………」

「………………」

「………元気になるよう」
 もうだめ………限界だよ……。

目の前が白くなってきちゃった………。

「………………バカ……」
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