儚キ想イ
 白い建物の中。

気がついたらそこにいた。

「…………………」

 あの後、近くを通りがかった人に助けてもらった私たちは病院に運ばれた。

「…………………………」

 隣にあるはずの彼の姿はなく、反対側には一輪の花と一冊の本。

「ナギ………」

 頭が痛む中本に手を伸ばす。
「自分で話してほしかったよ………」

 数ページしか書いていなかった日記。

最終日は昨日だった。

「………夢……叶えたかったのに…ダメじゃん」

 病室に響いた小さな言葉と風の音。

 ナギは今頃…………箱の中に入って旅の準備をしてるのかな…。

私も行きたいよ。

でもナギは意地悪だからダメなんだよね、ついていったら。


**************
今日から…俺はなつに従わなければならない。

どうせ最終的には殺されるから日記をつけとく。

**************
シノと別れたくなかった。

あんなやつの話しに耳を傾けなかったら

俺らは今も幸せでいられたはずだったのに。

ごめん

バカなやつで

**************
明日はシノを連れてくるらしい。

俺は倉庫で待機

ボロボロにされるのはわかってる

でも行かないとシノが……

シノのためならやってやる

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朝に書くのは初めてだな

母さん
父さん
姉さん
みんな

ありがとう
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