儚キ想イ

 ナギの目には……目から零れそうな涙。

「もうお別れ」

「ぇ……」

「言葉通りお別れ。まだ1ヵ月しか付き合ってないから未練ないでしょ?」

「そんなこと……」

「俺は本気じゃなかったから」

「……ッ」

 ひどいよ。
じゃあなんで『お前だけ』って言ったの?

訳わからない!
理屈が通ってない!
こんなのナギじゃないおかしい!

「こんなとこで座ってないでこっちきな」

「…………」

 力が入らない体が勝手に動く。

動くにつれて……だんだんナギが遠ざかっていく、見えなく小さくなっていってる…。

 行かないでよ…私のこと好きって言ってくれたじゃん…。

なのにどうして…?

「ごめんな?」

 離れてるはずなのにナギの声が聞こえた………気がした。

あぁ…空耳が聞こえるぐらいナギのことが好きなんだ私。

裏切られたみたいになってるけど、そんなことじゃ嫌いになれないぐらい。

「好きだったよ……」

 私の儚い思いは消え果てた。
車に乗せられ……そこからわからない場所に連れて行かれて…………何をしたか、されたかも覚えていない。

頭の中はナギのことばかりでいっぱいだった……。

「好きだったのに………ナ………ギ…ぃ……」

 家に帰っときはもう心がボロボロだった。

男の人たちにされたことも言われたこともそう。

でも一番ボロボロにしたあの言葉……。

「…ぅ……ぐ………ぁあ……何で…なの…かな………ごめんな……って………」

 謝っていない『ごめんな?』が頭の中を白のペンキで塗りつぶして私のピンク色だったあの心は二つにさせられた。

どれだけないても

戻ってこないだろう

と思う

ナギが私のことが

キライになったなら…

私の思いはもう……

届かない場所にある

んだろうな………

ナギ………
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