I love you(短編集)
緊張で顔の筋肉が凍りつき、手には嫌な汗をじわりとかく。
僕の生まれて初めての告白を受け止める背中は、ぴくりとも動かない。
―……それが、答えなのか。
そう思えばただ、胸が苦しかった。
しかし、沈黙は聞きなれたハスキーボイスにあっさりと破られた。
「15歳と25歳って、アリなのかねぇ」
それは何でもないことをぽつりと呟くような、そんなもので。
え、と聞き返した僕に、彼女はまた、小さく笑った。
「まったくさあ、不意打ちだよ。酷いよ。…ガキの癖にさ」
ふわりと、シフォンが揺れる。
「あたしはさ、そういうのに弱いの」
少しだけこちらに顔を向けた彼女が、柔らかく微笑んでまぶしそうに目を細める。
夕陽に照らされた横顔は、見惚れるほどに綺麗で――そして少しだけ、ほんの少しだけ、頬がピンク色に染まっているように、見えた。
鮮やかな夕焼け。
ふわりと香る、香水の匂い。
揺れるシフォンの、柔らかな感触。
信号が青に変わり
止まった世界が、動き出した。