満ち足りない月




ともかく毎日毎日掃除ばかりの生活をしていた。

たまにご飯とこの部屋にある本で読書をするくらいで、ラルウィルとの会話もほとんどない。


しかしセシルにとってこの毎日は自分はここで生きている、という気がしてならないのだ。


掃除をする時も、食事をする時も、彼との会話でも。自らが“生きている”という実感が常にくっついてくる。


それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。


以前とは全く違った生活。

だからこれまで感じたことのないこの感覚を味わうことができるのだ。


この感覚が何なのかセシルは分かっていた。

幼い頃からの夢だった“これ”が。
< 129 / 255 >

この作品をシェア

pagetop