満ち足りない月
ラルウィルはすかさず首を軽く振った。
そしてエルに向き直るとまた微笑んだ。
「これは俺の仕事なんだ。大丈夫だよ」
するとエルは「そう…」、と笑いながらゆっくり扉を閉める。
「じゃあ今日も屋敷を綺麗にする為に掃除に戻るわね。ラルは終わったら廊下の窓拭きをお願いね」
最後ににっこりと笑顔を見せると、エルは扉を閉めた。
朝のさえずりが静かに聞こえ、耳に優しく響く。
残されたラルウィルは尚も閉められた扉を見つめていた。
「手伝う、か……」
「はあ…」
セシルは扉に背中をぺったりくっつけたまま、大きく溜め息をついた。