満ち足りない月
未だに彼の“ライン”に近付く事すら出来ていない。
何が好きで何が嫌いなのか、それすらも分からない。
もう5日も経つというのに。
「ヴァンパイアの心の闇、か…」
セシルは上を見つめながらぽつりと呟いた。
そしてすぐにハッとする。
何を考えてるの私。
もうすぐに私の方からここを離れるかもしれないのに。
でも…
ここに居れば、きっとあの人に見つからない。
ずっとあの人から逃げ続ける事が出来る。
一瞬そんな考えが頭をよぎった。
すかさずセシルは軽く頭を降る。