満ち足りない月
Ⅴ 小さな客人
いつも通りの朝がきていた。
しかしセシルはこの日、屋敷に来て初めて一睡も出来ず、朝日の光りを浴びる事となった。
眠れない夜は多少はあった。
不安と、どうしようもない孤独感に襲われるのは決まって夜だった。
夜は人の心を乱す。
誰もいないこの部屋で妙に自分が一人ぼっちな気がした。
しかしそれでも結局はいつの間にか朝になっていた。
一睡も出来なかった理由。
昨夜、リュエフに言われた言葉がどうしても頭から離れなかったのだ。
ああは言ったけれど、本当にそれでいいのかしら。
確かにここは私の家じゃない。
けれどここにいたい理由、それは大きく二つある。
本当に家に帰りたくない事と、私が彼を……愛してしまった事。
セシルは布団の中で寝返りを打ちながら思った。