満ち足りない月
しばらく夜風にあたると、セシルは横にあるシングルベッドにパタンと勢いよく倒れた。
今日は少し、疲れた。
ゆっくり寝よう。
大丈夫、きっとあいつ等もここまでは来ない………。
そして、ゆっくりゆっくりと――
いつの間にかセシルは静かな寝息と共に眠りに落ちていた。
冷たい夜風に触れながら、彼は静かに目を閉じた。
この風も何度感じた事か。
この白いバルコニーは毎晩ここに立つ彼を静かに見守っている。
スゥーっと目を開けると、手を目に当てた。
「――何をやってるんだ、俺は」
そう呟いて月を見た。
月は満ちている。