満ち足りない月




何食わぬ顔で席を立ち、客間へと上がった。

しかしそんな表情すら、ただ作っているのにすぎない。


私はなぜここを離れたくないのだろうか。

何をあの人に求めてるの。


自分を叱りつけるような、問い詰めるような事を考えた。しかし、答えは出ない。

もともとこんな事を考えた事もないのだ。



部屋に入ると、置いてあったトランクの中に荷物を詰めた。まあ、そもそも荷物などあまり持ってきたていないのだから、あまり関係ないのだが。


セシルはそんな少しの荷物をトランクに押し込めると、部屋を出た。

勿論、部屋の中も少し片付けて。
< 55 / 255 >

この作品をシェア

pagetop