満ち足りない月
何食わぬ顔で席を立ち、客間へと上がった。
しかしそんな表情すら、ただ作っているのにすぎない。
私はなぜここを離れたくないのだろうか。
何をあの人に求めてるの。
自分を叱りつけるような、問い詰めるような事を考えた。しかし、答えは出ない。
もともとこんな事を考えた事もないのだ。
部屋に入ると、置いてあったトランクの中に荷物を詰めた。まあ、そもそも荷物などあまり持ってきたていないのだから、あまり関係ないのだが。
セシルはそんな少しの荷物をトランクに押し込めると、部屋を出た。
勿論、部屋の中も少し片付けて。