満ち足りない月
Ⅲ 追憶の庭園
一階の最も広い広間でセシルは呟くと、袖をまくり出した。
今はまだ日が明けて間もない。
恐らくラルウィルも寝ているはず。
セシルはキッチンへと急いだ。
昨夜、二人は屋敷に戻るとラルウィルの薦めによりお風呂、食事を済ませた。
そして冷えていた体がすっかり温まった頃、書斎に入った。
セシルがこの屋敷に初めて来てから二度目の事だ。