ノワール・ナイト
「連れてこい!!」
ウェールズに命ぜられ、家来たちが魔女を連れてきた。
黒いローブを身にまとった魔女はキッと僕を睨み付けてくる。
──…紅い唇。
真っ黒な大きな目。
白く透き通るような肌。
漆黒の長い髪。
これまでの人間の贄とは比べものにならないくらい美しい…魔女。
──…食すだけでは、もったいない…。
「王…子?」
反応しない僕に戸惑うウェールズ。
僕は彼にニヤッと笑った。
「ぉ…王子が、お笑いに…ッ!?」
僕は椅子から立ち上がり、魔女に近づいた。
そして、驚くウェールズに言った。
「城中の者に伝えろ。
この魔女には、手を出すな…と。」
驚いたのはウェールズだけではなかった。
魔女も、その大きな目を更に見開き、僕を見つめる。
「名は、何だ?」
「──…。」
黙る魔女を抱き上げ、自室へと向かった。
何があっても声を出さないつもりらしいな、魔女?