ノワール・ナイト
「名を…教えるんだ。」
魔女から返ってきた言葉は質問とは別の事だった。
「他の女の子にも…こうゆう事、するのかしら?」
…いや?
今までのような人間の贄はウェールズの前で食していた。
今回の事は例外だ。
「しない。
君だけ──だ。」
魔女は微かに笑い──…と、いっても苦笑だが──“それが唯一の救いね”と呟いた。
「アルディス…。
私の…名、よ…。」
少し恥ずかしそうに言う魔女。
僕は魔女の両手の自由を奪う縄をほどく。
「アルディス──…僕のモノだ。」
観念したのかアルディスは、抱きしめる僕に腕を回す事は無かったものの、拒絶することもなかった。
「他の血は…もう、いらない。
アルディスの血だけが欲しい。」
首筋を舐めると少し体を震わせるアルディスに牙を立てる。
今までの贄の出すような色っぽい喘ぎ声を発せず、唇を噛むことで声を押し殺す姿が、また可愛い。
気を失ったアルディスに、そっと口づけ、抱き寄せて、僕は眠りについた。