この愛をきみに
更衣室から泰司の声が
聞こえたような気がしたが、
俺は止まらず走り続けた。
「陽菜っ!!」
靴箱に着くと、陽菜が笑顔で
立ち上がった。
「今日約束してないよな??」
俺は息を切らしながら言い放った。
そんな俺の手を陽菜は笑顔で握った。
「してないけど…一緒に帰りたかったんだ!」
陽菜の笑顔を見て、俺も自然と笑顔になった。
『付き合ってくれない…??』
高校二年の六月。
陽菜が帰ろうとした俺に言った言葉。
陽菜のことは友達としか思っていなかった。
しかし、
優斗の「付き合って好きになるかもよ?」という
言葉によって俺の気持ちは変わった。
もちろん、今は本当に好きだ。
人間の気持ちってものは
不思議なものだと、つくづく思う。