女子DEATHヒーロー
 拓兄はあたしの耳元に顔を近付けると、何かを囁いた。

「あいつに、……〜とか〜とか〜されたんだろ?」
「なっ!」

 佐々木と思考回路一緒!佐々木より生々しくなってレベルアップしてるけど!
 あたしが顔を真っ赤にすると、拓兄は鼻で笑った。

 見てないで助けろ、央太に佐々木!

「気持ち良かったか?」
「あたし、何にも……っつ!」

 拓兄に抗議しようとすると、顎を掴まれて上を向かされた。
 相変わらずのコワいけど、女の子たちがキャーキャー言う麗しい顔が間近にあった。

 あたしは見慣れてるけどね。

 あーあ、拓兄は昔から本当によくわからない。
 何をするにも唐突で、相談なんて絶対ない。拓兄の大切な人が亡くなった時にも、拓兄は何にも言ってくれなかった。亡くなったって聞いたのは1ヶ月経ってから。

 子どもだからって言わなかったのかもしれないけど……あたしだってお別れを言いたかった。あたしだって拓兄の支えにちょっとでもなれたかもしれないのに……。

 あたしが知った頃には、拓兄たちは高校に行って家には居なかった。


 拓兄にとってあたしは頼りないのは当たり前だけど、いつかは役に立ちたいって思ってた。


 って、何思い出してるんだろ。

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